
「大沢温泉・山水閣」は、宮沢賢治が湯治によく訪れたことでも有名らしい。雑誌などメディアでの掲載事例も多い。
宿は自炊部と旅館部に分かれており、自炊部では昔ながらの湯治をしながらの滞在ができるようになっている。
両者は隣りあって立っているのだが、様相が明らかに異なる。旅館部のほうは、近代的な旅館といった佇まいで、一方の自炊部は、木造の鄙びた雰囲気が漂っている。
その自炊部のほうで、日帰り入浴の受付をする。受付の人はとても親切で物腰も柔らかく、とても鄙びた宿とは思えない丁寧さだ。混浴の露天風呂はアブがかなり多いので注意してくださいと教えてもらった。
できれば入らないほうがいいよというような口調だったのだが、せっかくなので様子を見に混浴露天風呂・大沢の湯のほうへ行ってみる。受付のすぐ前は休憩できる畳の部屋があるのだが、昔ながらの家具などが置かれており、とても雰囲気がいい。そこから左のほうへ、古い古いじいさんの家のような雰囲気の廊下を延々と歩く。まず最初に食堂があり、そして宿泊用の部屋が続く。部屋はいずれも障子で仕切られ、旅館というよりも、ホントにじいさんの家に来たような雰囲気だ。しかも、古びた建築物から発せられる独特のにおいが立ち込めている。食べ物やタバコのにおい、カビなどが混ざり合った独特の臭気だ。
長い長い廊下を歩いていくと、突き当たりに露天風呂・大沢の湯はあった。ドアを開けてみると、人がかなりいたので、ここはやめておく。続いて、薬師の湯という内風呂へ。建物は幾度にもわたって建て増しされているようで、館内はとても複雑だ。一体自分が今どこを歩いているのか、そしてどちらへ進めば目的の薬師の湯があるかはさっぱりわからないのだが、時折ある案内板に従いあちこち歩いてようやく、浴場を見つけた。
こちらの風呂は、あまり大きくない。タイル張りのシンプルな内湯だ。さっと浸かって、旅館部・山水閣にある豊沢の湯へ向かう。ずっと進んでいき、角を曲がると突然高級旅館の雰囲気に変わる。ここからが山水閣だというのがはっきりとわかる。
風呂の入口の向こう側は宿泊客のみの利用となっているようだが、こっそりとのぞいてみたら、旅館らしく、調度品の展示などがあった。
風呂のほうだが、半露天ということだったが、実質は内風呂。開放感はほとんどない。露天という期待を持って入りに行くと期待はずれだが、内風呂だと思っていくと、開放感があっていいという感じではなかろうか。
若干とろみがあるお湯は、少し熱め。それより何より、ここの風呂は場所によってはかなり深い。ここ花巻温泉には湯船が深い風呂がいくつかあるようなので、こういった深い浴槽がこのあたりの特色なのかもしれない。
風呂からあがって、妻と待ち合わせ。そして、露天風呂をもう一度見に行く。そしたら誰もいなかったので、妻には休憩所で待っていてもらって、少しだけ入ってくる。露天風呂は、目の前に川が流れていて、いい感じだ。だが、湯船が写真で見て想像していたのと比べてかなり狭い。もちろん、小さいということはないのだが、写真では広大に見えていただけにちょっと残念だ。すぐ近くに橋がかかっているが、通るのはこの旅館の利用客だけなので、写真で見ていた印象よりも気にならない。
問題のアブのほうだが、確かに厄介だ。時折襲い掛かってくるのを手で振り落とす。ここは脱衣所も湯船のすぐ横にあるというワイルドな造りなので、着替えの際もうざくてしょうがなかった。
風呂から出て、建物を後にしようとしたのだが、子供がもっと遊びたいと言って訊かない。無理やり連れて行こうとしたら,テーブルの上に置いてあるメニュー表を投げようとして、他のお客さんに迷惑をかけそうになった。
車へ戻り、いただいてきたパンフレットを見る。この旅館は鄙びた雰囲気を大切にしているようで、自炊部用のパンフもおいてあった。
国道4号方面へ向かう。ここからは、盛岡を目指す。今日の宿泊希望予定地は、盛岡市郊外の小岩井農場だったのだが、小岩井農場は、盛岡市をさらに過ぎなければならない。盛岡市内で何を見るというわけではないが、暗い間にスルーしてしまうのもちょっと惜しいような気もしたので、その手前の紫波町にある道の駅・紫波で車中泊することにする。
カーナビを見てみると、道の駅・紫波はちょうど目と鼻の先。しかも近くにスーパーがあったのでそこで夕食を買い込む。
スーパーの駐車場で夕食を食べ、道の駅・紫波のほうへ。
道の駅・紫波の駐車場はがらんとしている。国道ではなく、県道に面しているため、トラックなどのうるさい車も多くはない。しかも駐車場には高木が植えられており、車を停めると森の中のような雰囲気になる。若干暑いのが気になるが、どうしようもないのでこのまま寝る。